あらゆる業種の販促活動として導入が進められているコンテンツマーケティングですが、その流れはBtoCだけにとどまらず、近年ではBtoB製造業への活用が注目を集めています。中でも、コンテンツマーケティングの要といわれるオウンドメディア運営に目を向ける企業が増えており、今後はよりマーケティング要素に力を入れたアプローチが必要です。

本記事では、製造業におけるホームページとオウンドメディア運営の違いについて解説するとともに、製造業企業がオウンドメディア運営を成功させるためのポイントをご紹介します。

オウンドメディアとは

オウンドメディアとは、企業が自社の製品・サービスに関連する情報をメディア化して発信するためのサイトです。ブログやコラムと同様に、大きな成果をあげるためには中長期的な時間を要しますが、自社のコンテンツ資産として長期にわたり残り続けることが大きなメリットといえます。

オウンドメディアとホームページの違い

オウンドメディアは、企業のホームページ(コーポレートサイト)とは別に作成された情報発信用サイトであり、両者は基本的に運営目的が異なります。

ホームページは自社の製品・サービスなどの情報提供が大きな目的です。一方、オウンドメディアはマーケティングが主な目的であり、自社の製品・サービスを購入してもらうための導線を盛り込むことで購買につなげる構造になっています。

オウンドメディアの成功事例

ここでは、実際にオウンドメディア運営によって成果をあげている製造業企業をご紹介します.

株式会社キーエンス

センサー技術や測定器といった分野で世界的にも注目を集めるキーエンスですが、WEBマーケティングでも大きな成果をあげています。

キーエンスでは、「センサとは.com」や「安全ケーススタディ」など約80サイトものオウンドメディアを運営し、製品サイトとは別に各製品に関する疑問を拾うことができるシステムを確立しています。また、各ページのニーズに合った製品解説やお役立ち資料のダウンロードを設置することで、あらゆる角度から顧客情報を獲得できる構造です。

公式WEBサイト

三菱電機株式会社

三菱電機は、家電製品から産業機器、宇宙システムなど幅広い分野で知られる大手製造メーカーです。同社では、FA(FactoryAutomation)に関するあらゆる情報を提供するオウンドメディア「FA羅針盤」を運営しています。

自社製品の導入事例や製品開発の裏側といった専門記事から、日常生活で馴染みのある製品についてのシステム紹介など、FAに関するお役立ち情報が満載です。

公式WEBサイト

製造業企業がオウンドメディア運営を行うべき理由

コロナ禍を機に、世界中のマーケティングは大きく変化しました。アフターコロナと呼ばれる現在においても、DX推進の流れもあり、WEB活用は各企業にとって不可欠な施策です。近年では、製造業企業がオウンドメディアを通じてリード獲得を試みる動きが活発化していますが、具体的には以下のようなメリットが期待できます。

WEBを通じて集客・商談が可能

近年では、各企業がWEBによる情報収集を行うのが当然の時代といえます。したがって、オウンドメディアを通じてコンテンツの需要と供給をうまくフィットさせることができれば、多くの見込み顧客へのリーチが可能です。ホワイトペーパーやカタログなど、自社製品への導線をオウンドメディア内に構築することで、見込み顧客の情報を入手できるのは、大きなメリットといえるでしょう。

また、一度作成した記事はその後、半永久的に集客コンテンツとして残るため、直接的な営業活動をしなくても顧客側からの継続的なアプローチが期待できます。これは、営業活動のためのリソースが不足している製造業にとっては、非常に魅力的な要素です。

さらに、商談時に不足していた製品情報や導入メリットなどを、オウンドメディアを通じて顧客が知る機会を提供できるため、WEBによって商談成功を後押しすることができます。下請けや受注生産といった受け身の経営体質が根付いている企業であっても、自社に適したマーケティング戦略を立てることで、勝算は十分にあるといえます。

ブランディングの向上

オウンドメディアでは、コンテンツ提供を通じて顧客のニーズを把握し、製品やサービスの品質にフィードバックすることが可能です。自社技術を広く発信することで、業界内での認知度向上につながるなど、あらゆる取り組みが企業のブランディング向上に結びつきます。WEBによる情報収集が基本となる現代だからこそ、競合他社との差別化を図るうえで不可欠な取り組みといえます。

ニッチな市場ほど成功できる可能性が高い

オウンドメディアにおいては、ニッチな分野ほど大手企業が参入していない可能性が高いといえます。したがって、ロングテールキーワードなど、製造業特有の専門的なキーワードを上手く活用することで、上位表示といった成果につながりやすい施策です。検索ボリュームが少ないキーワードなど、流入数が期待できない場合であっても、自社の強みや専門技術を正しくアピールすることで問い合わせや受注を安定的に増やすことができます。

リクルート目的としても効果大

社内の様子や製品技術をオウンドメディアを通じて発信することで、求職者が企業理念や社内環境を知るきっかけとなります。従業員へのインタビュー記事など、実際の仕事内容や人間関係について紹介するコンテンツを作成し、自社の魅力を内側から伝えることが可能です。

入社後に短期間で離職されてしまうといった「採用のミスマッチ」を減らし、自社にフィットする可能性の高い熱意のある新入社員を採用することができます。

製造業がオウンドメディア運営を成功させるためには?

近年では、WEBを活用したマーケティング施策はあらゆる業種にとって不可欠な存在です。しかし、BtoBが主流の製造業は、現在でもWEBに対する苦手意識が強い業界といえます。ここでは、製造業が実際にオウンドメディア運営を行うにあたり、どのようなポイントに注意して実行するべきかを解説します。

運営目的を明確化する

オウンドメディアで成果をあげるためには、中長期的な運営が不可欠です。記事の制作・公開を継続するためにも、最終的な運営目的を明確にしたうえで取り組む必要があります。「ブランディング」や「新規顧客獲得」、「採用活動」など、オウンドメディアはさまざまな効果が期待できる施策といえますが、まずは大きな目標や軸を決め、運営を継続していくことが重要です。

運用体制を整える

先述のとおり、オウンドメディア運営で最も重要なのは記事制作・公開の「継続」です。取り組みをスタートする際には、あらかじめ内部・外部の運営体制を整えるとともに、記事制作のポイントを理解しておく必要があります。

良質な記事制作を行うためのポイント

はじめに、記事制作におけるキーワードを入念に選定することが重要です。自社の強みとなる製品や技術情報など、コンテンツになり得る要素を可能な限り洗い出します。

次に、洗い出した各要素(キーワード)の検索ボリュームを調査します。製造業では、検索ボリュームが少ない場合でも、競合性が低く、大手競合他社の参入がないキーワードを活用してコンテンツ制作を行うことは非常に効果的です。

最後に、想定される検索ユーザー(潜在顧客)が抱える課題をイメージするとともに、そこに応える自社製品や技術を持っていることを記事コンテンツとしてアピールします。

継続的なコンテンツ制作ができる体制をつくる

オウンドメディア運営はコンテンツを継続的に制作・公開し続けることが重要です。制作のポイントをおさえたうえで、計画的なコンテンツ制作を実行するために、人員確保やスケジュール管理などをリストアップしていきます。また、必要に応じて、コンテンツ制作を外部の制作会社へ委託することも有効です。

社内理解の向上

中小企業をはじめとする、少数精鋭の製造業においては、マーケティング専門の部署がない場合も多く、オウンドメディアなどのWEB施策に対する社内理解を得ることは非常に困難です。しかし、リソースが限られている状況では、各部署の協力やアイデア出しなど、企業全体でマーケティングに取り組む姿勢が重要になります。

オウンドメディア運営を行うことで、どのようなメリット・成果が期待できるのか、より具体的な解説とともに、構想や進捗を社内共有することが大切です。

まとめ|オウンドメディア運営のポイント

本記事では、製造業におけるホームページとオウンドメディア運営の違いについて解説しました。ここまでの内容を踏まえ、オウンドメディア運営をこれから始めるために大切なポイントを2点ご紹介します。

まずはブログ運営など、スモールスタートからでも

DX推進やスマート化など、これからの製造業においてはWEBを活用したマーケティング施策がより不可欠であると予想されます。

中でも、オウンドメディア運営はBtoB製造業の性質にフィットした効果的な戦略です。

一方で、こうしたWEB施策に対して前向きな印象を持っている製造業は少数であり、ほとんどの企業にとっては、ハードルの高い施策という印象が根付いています。

予算が少ない会社の場合、まずは自社サイト内にブログ(コラム記事)を開設するなど、より身近なところから一歩踏み出し、規模に合わせてリニューアルを重ねていくのも一つの方法でしょう。

ブログやコラム内で自社技術を紹介し、リード獲得など、大きな成果をあげている製造業企業も存在します。

良質なコンテンツ制作の継続|適切な外注先の選定

くり返しお伝えしてきましたが、製造業のオウンドメディア運営において最も重要なのは、高品質な記事コンテンツを中長期にわたり継続的に制作することです。

そのためには、運営に向けた社内体制を整えるとともに、各部署間の連携をより綿密なものにする必要があります。

また、コンテンツ制作を外部の制作会社に依頼する場合には、一般的なマーケティング会社やWEB制作会社ではなく、製造業専門のコンテンツマーケティング支援会社へ依頼することが重要です。

一般的な外注先では、製造業特有の専門技術や自社の強みを理解することができないため、オウンドメディアを通じて正しいアピールを行うことは困難といえます。適切な外注先を選定することも、製造業のオウンドメディア運営にとっては非常に大切です。