古くから日本はものづくり大国と呼ばれ、「良いものを作れば売れる」という時代が続いてきました。しかし、近年ではコロナ禍の影響もあり、顧客がWEBから情報を得ることはもちろん、対面での商談の場も大きく減少しています。

開発に没頭するだけで製品が売れる時代は終わり、これからは自社の強みや専門技術をコンテンツとして積極的に開示していく必要があります。

なぜ製造業はコンテンツマーケティングを検討するべきなのか?

BtoBが主流の製造業においては、ユーザーが購入を検討する際、「企業」として意思決定を行うため、成約にいたるプロセスは長期的かつ複雑です。

また、意思決定に関わる人間のなかには設計・開発など、上流部門の担当者も多く、より専門性の高い技術情報が求められます。

コンテンツマーケティングによるメリット

コンテンツマーケティングによって有益な情報を発信することで、顧客の信頼を築くことができるのが製造業にとっての大きなメリットです。

さらに、コンテンツを通じてユーザーが抱える課題の解決策を提供し、興味を持ったユーザーをリードに変えていきます。

長年、新規顧客開拓が課題といわれている製造業にとって、WEB施策はハードルが高く敬遠されがちですが、このように時間をかけて自社技術を伝えるなど、実は相性の良い側面をいくつも持っています。

製造業がコンテンツマーケティングを始めるための6ステップ

ここからは、実際に製造業企業がコンテンツマーケティングを始める際の手順をステップごとに分けて解説します。

STEP①:目的を明確化する

コンテンツマーケティングを導入するうえで最も重要な第一歩が目的の明確化です。

特に、製造業ではWEB施策に対して苦手意識を持っている企業が多く、前提となる目的や目標がブレてしまうとコンテンツマーケティングを継続することは非常に困難になります。

コンテンツマーケティングを導入することで実現したい自社の未来を「具体的に」想像することが重要です。

STEP②:ペルソナの設定

ペルソナとは、自社製品・サービスの購入対象となるユーザー像のことです。コンテンツマーケティングでは、どのようなペルソナに向けて情報を発信するのかによって、コンテンツの種類や内容も大きく変わります。製造業では多くの企業がBtoBの形態をとっており、購入の意思決定は複数ユーザーによって行われます。購入にいたるまでのプロセスがより複雑になるため、一般的なBtoCとは考え方が異なることを踏まえて、より多角的な視点からペルソナを設定する必要があります。

STEP③:カスタマージャーニーマップの作成

カスタマージャーニーマップとは、ユーザーが自社の製品やサービスを認知してから購買にいたるまでの道筋のことで、直訳すると「顧客旅程図」という意味です。カスタマージャーニーマップを作成することで、プロセスごとに進捗状況や達成度が確認できるほか、顧客のステータスにあわせて適切なアプローチを行うことが可能です。見込み顧客の状況によって、心理的効果の高いコンテンツは異なります。より効果的なコンテンツを企画するためにも、見込み顧客の行動を可能な限り細分的にマップ化することが重要です。

STEP④:コンテンツの企画

カスタマージャーニーマップをもとに、効果が期待できるコンテンツを企画します。ここでは、可能な限り複数考案することが重要です。設定したKPI達成を視野に入れ、なおかつ実現可能なコンテンツを企画します。

また、自社だけではノウハウやリソースが不足している場合には、コンテンツ制作を外部へ委託することも効果的な選択肢です。コンテンツの企画が上手くいかなければ、どんなにコンテンツ制作にリソースを費やしたとしてもKPI達成やその後の成果にはつながりません。

STEP⑤:コンテンツの制作・公開

企画に沿ってWEB記事や動画など、実際にコンテンツ制作を行います。設定したKPI達成のための導線や、盛り込む情報を検討しつつ、コンテンツの制作・公開を継続していきます。

先述のとおり、製造業のコンテンツマーケティングでは、購買にいたるまでのプロセスが複雑であり、重要視されるのは、より専門的なコンテンツの提供です。外部委託などを適切に活用し、高品質なコンテンツ制作を継続することが成功の鍵をにぎっています。

STEP⑥:成果測定

制作・公開したコンテンツに対する成果測定を行います。設定したKPIに対して実装後はどのような状況になっているか、数値を用いて定量的に検証します。結果をもとにステップ初期段階に戻り、新たなコンテンツの企画など、改善に向けて施策を繰り返します。

製造業におすすめのコンテンツマーケティング施策

ここでは、製造業企業が導入することで成果につながりやすい施策をいくつかご紹介します。

WEB記事・WEBサイト

コンテンツマーケティングの中でも、最も一般的に用いられる施策です。新規ユーザーからのアクセス数を増やすために、キーワードを選定してSEO対策を施したWEB記事を作成します。

WEB記事やWEBサイトでは、記事構成を作成し、独自情報を含めることで、上位表示を狙います。製造業においてはキーワード選定が難しく、検索ボリュームの少ないロングテールキーワード(ニッチキーワード)をあえて使用することで、上位表示やリード獲得につながる場合もあります。

動画

主にYouTubeなどを使用したコンテンツ制作のことで、ユーザーに対して自社の技術や情報を視覚的に訴求できることが特徴です。

近年、製造業においてもYouTubeで自社技術や製品情報を配信する動きが活発化しています。製造業のように専門性の高い分野では、WEB記事だけではなく、動画解説を併用してよりわかりやすく自社の魅力を発信することが効果的です。

ホワイトペーパー

ホワイトペーパーとは、読者に対して有益な情報を提供する資料のことです。ホワイトペーパーをダウンロードするために個人情報を入力してもらう仕組みを作り、リード獲得へとつなげることが目的です。

また、リード獲得後はリードに対してナーチャリング(育成)を行うことで、ユーザーの購買意欲を高め、受注率・成約率をアップさせることができます。

直ちに受注につながりそうな見込み顧客だけではなく、数ヵ月後、1年後に成約に結びつく可能性のある顧客にもアプローチできる手法です。

メールマガジン

メールマガジンは、企業の担当者から購読希望者に対して一斉送信される情報メールです。

顧客との関係を構築するとともに、自社製品の情報をわかりやすく解説することで自社のファンを増やす効果があります。

メールマガジンによるコンテンツマーケティングでは、すでにメールアドレスなどの顧客情報を入手した顧客に対して施策を行うため、一般的なSEO対策は重要ではありません。自社のオウンドメディアやコラムで制作したWEB記事をメールマガジンによって紹介する手法もありますが、上位表示などの観点ではなく、あくまで顧客の購買意欲を掻き立てるようなコンテンツが求められます。

このように、メールマガジンでは購読者や過去の顧客リストがどのような記事・コンテンツを求めているかが成約獲得のための大きなポイントです。

導入事例

導入事例とは、自社の製品やサービスを実際に購入し、成果をあげた顧客を紹介する記事です。顧客に対して購入後の効果や導入の決め手を取材し、ストーリー性をもった記事にまとめ上げます。

製造業のようにBtoBが主流となる分野では、導入事例は非常に大きな効果が期待できるコンテンツです。BtoBでは、単価が高く購買の意思決定者が複数存在するなど、成約までのプロセスが複雑になります。

したがって、購買後の失敗に対するリスクを懸念する顧客も多く、導入事例はより信頼性の高いコンテンツとして扱われます。 また、WEB記事としての独自性が高いことも大きなメリットです。

まとめ|製造業がコンテンツマーケティングを始めるためには

今回は、製造業のコンテンツマーケティングの始め方を6つのステップに分けて解説しました。 製造業では、WEBに関して苦手意識を持つ企業も多く、「コンテンツマーケティング」という言葉に対して前向きな印象ばかりではありません。

しかし、それは同時にコンテンツマーケティングを上手く導入できれば製造業企業として抜きん出た存在になれることを意味しています。

製造業のコンテンツマーケティングでは、一般的なSEO対策や小手先のテクニックでは成果につながりにくいため、WEB施策の経験が浅い企業でも十分に参入可能です。

「顧客が抱える課題」や「自社の強み」と真摯に向き合うことで、ユーザーにとって有益なコンテンツを制作することが大切といえます。

なお、高品質なコンテンツ制作を継続するためには、プロのアウトソーシングに頼ることも有効な選択肢です。製造業専門のコンテンツマーケティング支援会社に制作を依頼することで、自社技術をより効果的にアピールし、問い合わせや受注の獲得につなげることができます。

コンテンツマーケティングの導入に関してお悩みを抱えている担当者の方は、本記事の内容を参考のうえ、ぜひ検討してみてください。