製造業でBtoBマーケティングを本格的に展開したい、デジタルマーケティングに取り組みたい、けれど何から始めれば良いか迷っている。本記事では、そんな担当者の方に向けて、製造業がBtoBマーケティングを実施するメリット、具体的な6つの手法、成功させるコツについて解説します。

BtoBマーケティングにはさまざまな手法がありますが、限りあるリソースのなかで成果を出すためには、目的やターゲットを明確にしたうえで、自社にとって効果的な手法を選ぶ必要があります。

製造業がBtoBマーケティングを行うメリット

昨今のBtoBマーケティングでは、デジタルマーケティング(Webマーケティング)の重要度が増しています。それを踏まえ、製造業がBtoBマーケティングを実践することで、顧客の購買行動の変化に対応でき、DXの推進により限られたリソースで効果を出せる体制を作ることも可能です。

顧客の購買行動の変化に対応できる

製造業における従来のBtoBマーケティングの手法は、対面での取引先との交流や展示会が主流でした。しかし、インターネットの普及、さらにはコロナ禍も大きな後押しとなり、顧客が情報収集にWeb検索やウェビナーを活用することが増えています。

そういった顧客の変化に対応するには、BtoBマーケティングのなかでもデジタルマーケティング(Webマーケティング)に取り組む必要があります。顧客のフェーズに合わせて検索ニーズを満たすWebコンテンツを作ることで、商談化や受注につながるホットリードを獲得できる可能性が高まります。

DX推進による効率化と属人化の解消

多くの業界で人手不足が課題となっていますが、製造業も例外ではありません。限られたリソースで成果を上げるためには、BtoBマーケティングの効率化が必要です。

また、従来のBoBマーケティングにおける営業スタイルは、属人化しやすく、担当者の経験やスキルによって成果が大きく左右する課題もあります。

これらの課題の解決には、DXの推進が効果的です。MAツールやCRMツールなどを必要に応じて導入することで、業務を効率化し、属人化した領域を減らせます。ツールを活用して、過去のやり取りからリアルタイムの進捗まで関係者全員で同じ情報を共有できれば、担当者による成果のブレが少なくなり、全体として成果が上がるはずです。

製造業のBtoBマーケティングの手法

製造業がBtoBマーケティングを展開する方法として、主に以下の6つがあります。

  • 展示会
  • バーチャル展示会
  • ウェビナー
  • 自社ホームページ・ブログ
  • オウンドメディア
  • ターゲティング広告

展示会

Webコンテンツが活用されるようになっても、リアルの展示会は依然として重要なBtoBマーケティングの手法のひとつです。

展示会では、実際の商材を見せながら説明でき、商材によってはデモストレーションも行えるため、商材の具体的な利用イメージや有用性を認識してもらいやすくなります。

また展示会では、多くの顧客候補と交流できるのもメリットです。展示会の訪問者の多くは、展示会に出展する商材に興味関心を持っていたり、課題を解決するための方法を探していたりするので、確度が高いといえます。

そういった確度の高い顧客候補と一度に多く接触できるので、見込み顧客の獲得や商談の設定など、効率的に営業活動ができます。

バーチャル展示会

バーチャル展示会とは、VRを使ったオンラインの展示会でのこと。コロナ禍以降、増加している手法です。参加者は自社にいながらPCやタブレットで参加できるため、時間や場所に捉われず、リアルな会場の展示会よりも参加しやすいメリットがあります。

出展側としても、ブースを借りたり什器を設置したりする必要がないため、低コストで実施できるメリットがあります。会場やスペースの制限がなく、スケジュールや規模の自由度も高くなり、さまざまな要件の展示会の開催が可能です。

ウェビナー

ウェビナーとは「Web」と「 セミナー」を組み合わせた造語で、Web上で開催されるセミナーのことです。バーチャル展示会と同様、コロナ禍以降、急速に広まりました。

メリットはバーチャル展示会と同様です。リアル会場のセミナーよりも低コストで、日時の設定も自由にできます。オンラインなら、海外からも参加しやすいでしょう。

オウンドメディア

オウンドメディアとは、自社で運営するホームページやブログなどのメディアのことです。オウンドメディアをBtoBマーケティングに活用することで、Web上で情報収集をする担当者を集客できます。

製造業の企業が保有する技術やノウハウは他にないものが多く、その情報を探し求めている担当者は多くいます。しかし、BtoBはニッチなカテゴリーも多く、ネットで検索しても情報にたどりつけないことも少なくありません。

このような状況を解決できるコンテンツを発信すれば、顧客となる可能性の高い担当者を集められるでしょう。

ターゲティング広告

ターゲティング広告とは、ユーザーの行動履歴や属性をもとにターゲットを絞り込み、配信する広告です。広告を通じて自社に興味を持ってもらえた時点で、確度の高い見込み顧客になるでしょう。

ターゲットのニーズに応じたコンテンツと誘導先を設定した広告を配信することで、反応率やコンバージョン率を高めることができます。広告の誘導先としては、問い合わせや資料請求のフォーム、自社のオウンドメディアなどがあります。

BtoBマーケティングの進め方

マーケティングの基本は、市場の分析、リードの獲得、顧客接点の強化の順番です。BtoBでもその順番は変わりません。

市場を分析する

マーケティングでは、まず、市場分析が重要です。自社が事業展開をする業界の特性や動向、ニーズを調査したうえで、施策を考えましょう。市場調査の代表的な方法は以下のとおりです。

  • デスクリサーチ:統計資料や調査レポート、データベース、刊行物を調べる
  • アンケート調査:アンケートを実施して定量・定性データを分析する
  • インタビュー調査:対象者の深い本音やインサイトを引き出す

市場分析の結果を踏まえ、どのような顧客をターゲットとするかを考えます。ターゲット像を具体的に描くことで、獲得すべき顧客が明確になります。

リードを獲得する

市場を分析してターゲットを定めたら、それに応じたマーケティング施策によりリード(見込み顧客)を獲得します。代表的なリード獲得の方法としては、以下のようなものがあります。

  • Webサイトからの問い合わせ・資料請求
  • 展示会での名刺交換・アンケート
  • VR展示会・ウェビナーへの参加者登録
  • メルマガの登録

ターゲット像を明確にしておくことで、確度の高いリードを獲得できます。その際、ターゲット像をさらに細かく具体化したペルソナ設定を行うことができれば、より適した施策を計画しやすくなります。

ターゲット像やペルソナ設定、獲得したリードへの営業など、マーケティング部門と営業部門が密接に連携することも大切です。

顧客接点を強化する

一口にリードと言っても、その段階はさまざまです。後一歩で購入するリードもいれば、興味を持ったばかりのリードもいます。獲得したリードの成熟度や緊急度に合わせて、さまざまな内容や方法でアプローチをして、リードを育成していきます。

たとえば、すぐに購入したいという段階なら、料金プランの分かりやすい提示や導入サポートの案内などが効果的です。一方、検討を始めたばかりの段階なら、商品の基本部分からわかりやすく丁寧に解説するコンテンツなどを提供すると良いでしょう。

購入に至った後も顧客と接点を持ち続けることも大切です。たとえば、商品を使い始めた顧客に対しては、よくある質問やQ&Aなどのコンテンツを充実させ、顧客満足度を高めましょう。そういったWebコンテンツを活用することは、問い合わせ対応の効率化にもつながるでしょう。

BtoBマーケティングを成功させるコツ

製造業がBtoBマーケティングを成功させるには、以下3つのポイントが重要です。

ターゲット・ペルソナや顧客ニーズを明確に設定する

製品をやみくもに売ろうとしても効果は出ません。どのような顧客に購入してもらうか、ターゲット・ペルソナを明確に設定しましょう。

ペルソナとは、自社の代表的な顧客像のことです。年齢・職業・役職・興味関心・悩みごとなど、さまざまな要素を設定し、リアルな顧客像を作ります。

「誰に売るのか」「どの業界のどんな層に需要があるのか」を見極めることが大切です。

CRMやMAなどのツールで一元管理する

BtoBマーケティングをデジタルで推進するのに、CRM・MAツールの導入が重要です。これらのツールは顧客情報を一元管理できるため、効率的なリードナーチャリングが可能になります。

リードナーチャリングとは見込み顧客(リード)を育成し、自社製品・サービスへの購入意欲を高めて受注につなげる手法です。

ツールによってターゲットリストをさまざまな条件で作成でき、行動履歴を見ながら、必要なタイミングでアプローチできます。施策の効果測定も可能で、施策の改善にもつながります。

専任の組織を立ち上げる

BtoBマーケティングの成果を出すには、専任部署を設けることも重要です。他の業務との兼任ではマーケティングに注力できず、中途半端になってしまう可能性が高いためです。

BtoBマーケティングで成功するには、業務・業界だけでなくマーケライティングの知識が必要で、時間を割いて取り組む必要があります。マーケティングを社内に浸透させるうえでも、マーケティング専任部門の設置は必須です。

製造業のBtoBマーケティングの事例

この章では、BtoBマーケティングで成功した製造業の事例を3つ紹介します。

ハードロック工業株式会社の「ねじ締結技術ナビ」

ハードロック工業株式会社は、ねじやナットの開発・製造・販売を手掛けている大阪府の企業です。同社はエンジニア向けのオウンドメディア「ねじ締結技術ナビ」を運営し、ねじの緩みなどに特化した情報発信を行っています。

同サイトで公開している記事タイトルの一例は、下記のとおりです。

  • ボルトの締付け方法まとめ
  • 鉄鋼材料の低温脆性について
  • 信頼限界楕円法を用いたボルトの締付けについて

かなりニッチな情報を発信しており、浅く広くアクセスを集めるタイプのメディアではありません。その一方、ねじに関する情報を探している企業の担当者にとっては、需要の高いテーマでしょう。

コンテンツは専門知識に基づいた正確かつ分かりやすいもので、図解や検証動画も作成されています。こういったコンテンツが評価された結果、同社はねじの業界で知名度を上げ、新規リード獲得件数を大きく伸ばすことができました。

神戸製鋼所の「PVDコーティング装置」

神戸製鋼所は鉄とアルミの関連製品の開発や製造を行っているメーカーです。

この事例は、製品の1つである「PVDコーディング装置」のデジタルマーケティングへの取り組みです。同社はもともと既存顧客との取引が多いなか、PVDコーディング装置は新規開拓の余地がある製品でした。

しかし、既存MAツールの強化や単発の施策では成果を出すのは難しいと判断。そこで、マーケティングの全体戦略と目標を設定し、顧客接点全体に紐づく施策の立案・実行・運用まで含めたPDCAを着実に回すようにしました。

具体的には、リード獲得から受注まで一連の流れを設計したうえで、広告運用やコンテンツ制作を、外部企業と共同で取り組みました。

目標として半年での新規有望顧客数を設定したところ、最終的に目標を超えた数を達成。デジタルマーケティングのノウハウの蓄積も進んでいます。

三栄電子株式会社のGoogle広告の活用

三栄電子株式会社は、電子部品などを取り扱う商社です。半導体部品や一般電子部品など、幅広い業界の電子部品を手掛けています。

これまで展示会を中心に新規顧客獲得をしてきましたが、会社の認知度の低さや営業人数の少なさに課題がありました。さらに、コロナ禍で展示会ができなくなったことで、行き詰まりを感じていました。

そこで、新たなBtoBマーケティング手法としてデジタルマーケティングに着目します。ターゲットに刺さるキーワードでGoogle広告を出稿し、自社のLPへの誘導を図りました。

そのうえで。LPからの問い合わせ内容を見ると、電子部品を探す企業、開発をしたい企業が多かったことから、どのようなキーワードで検索していたのかヒアリングしました。その結果をもとに営業部門と協力しながら、最適なキーワードを作り上げるための試行錯誤を繰り返しました。

取り組みの結果、リードの獲得が大幅に増え、商談件数や契約件数はWeb広告を利用する前の10倍に達しました。

製造業のBtoBマーケティングを外注する場合に考慮すべきポイント

これまでBtoBマーケティングの経験がない企業の場合、すべて自社で実行するのは難しいでしょう。Web広告やVR展示会の開催といった手法を実践するには、専門知識やノウハウも必要です。

ここからは、BtoBマーケティングを外注する場合に考えておきたいポイントを解説します。

製造業の技術に見識のある担当者がいること

1点目に考慮したいのが、製造業の技術内容や最新の動向に詳しいかです。コンテンツの発信において製造業の科学技術などに触れることになりますが、難解なものも多く、そのまま説明すると専門用語の羅列になってしまうかもしれません。

Webサイトや説明会で使う資料では、専門知識のない相手でも理解できるよう、わかりやすく説明できる技術が求められます。製造業の技術に対して理解があり、説明力の高い担当者なら、技術に関する難しいトピックも理解しやすい形で発信できるでしょう。

制作実績が豊富であること

2つ目に考慮すべきポイントは、制作実績が豊富かどうかです。実績が豊富なほど、製造業やBtoBマーケティングに精通しており、独自のノウハウがあるといえます。

制作実績をホームページで公開している会社であれば、信頼性が高く安心して取引ができるでしょう。さらに、自社の事業に近い分野での実績があると、よりスムーズに外注できる可能性があります。

製造業のBtoBマーケティングなら日本アイアール

製造業のBtoBマーケティングの手法はさまざまで、デジタルマーケティング関連の手法も注目されています。その一方、マーケティングの知識やノウハウがないと、手法の導入や活用が思ったようにうまくいかない可能性もあります。

日本アイアールは製造業の技術に関する知識・ノウハウがあり、制作実績が豊富。製造業向けのWebサイト掲載用の記事、製品紹介資料など、ものづくりに関するコンテンツ制作に強みがあります。

BtoBマーケティングにおけるバーチャル展示会なども展開可能です。見込み顧客を獲得したい方は、ぜひ一度日本アイアールにご相談ください。