1.製造業におけるメディア運営とは

本稿では、製造業の企業が自社製品の売り上げをアップさせたいとき、どのようなメディア運営を行えばいいかについて、具体的にご説明したいと思います。

 

(1) B2BとB2C

製造業といっても、さまざまな業種・製品の会社がありますが、メディア運営という観点でいえば、大きくB2B(Business to Business)の企業と、B2C(Business to Customer)の企業に分けて考えることができます。

B2Cの企業は、一般消費者を直接顧客としています。このような企業の場合、消費者にいかに認知されるかが重要であり、認知度が直接売り上げに結び付くと言っても過言ではありません。そのため、これらの企業が活用すべきメディアは、TVや大衆向け雑誌および、LINE、X(旧Twitter)、Instagram、TikTok、YouTubeなどのSNSになります。

一方B2Bの企業の場合は、他の製造業者を顧客とします。このような企業の場合、ただやみくもに認知度を上げることは、効果的に売り上げアップにはつながりません。重要なのは、その会社の製品を必要としている「見えない顧客」に、製品を知ってもらうことなのです。そこで活用されるべきメディアは、専門雑誌や展示会、およびWebサイトになります。

ところで、特に日本の製造業者は、よくピラミッド構造になっていると言われます。

たとえば自動車の場合。ピラミッドの頂点にはトヨタ、日産、ホンダ、マツダ、スバルなどの自動車メーカーがあります。これらは、B2C企業です。しかし、これら自動車メーカーは部品や材料を供給している多くの製造業者に支えられており、さらにこれらの企業も他の多くの製造業者から部品や材料を購入しています。また、これらの企業に製品を製造するための装置や設備を提供する製造業者もあります。これらはみな、B2B企業です。

つまり日本の製造業者の大部分は、B2B企業によって占められている、と言ってよいでしょう。

(図1 製造業のピラミッド構造)

なお、ピラミッドの頂点にあるB2C企業は大企業が多く、マーケティングなどにも大きな費用をかけて取り組んでいることと思います。そこで、本稿ではこれらB2C企業は対象とせず、大半を占めるB2B企業の製造業者を対象とします。

(2) B2B企業におけるメディアの役割

前項で説明した通り、B2B企業が自社製品の売り上げをアップさせるためには、現時点での顧客以外で自社の製品を必要としてくれるであろう未だ見えない顧客(潜在顧客)を見つけなければいけません。

ではどのようにポテンシャル顧客をみつけるのか?その答えは、ポテンシャル顧客の行動にあります。

ポテンシャル顧客は、自社に何かの「課題」を抱えており、それを解決するための「解決策」を探しているはずです。

(図2 ポテンシャル顧客の抱えている課題)

メディアは、このようなポテンシャル顧客が自社の課題の解決策を検索する場としての役割を持っています。その場として特に重要なのが、Webサイトです。そこで、次の章では製造業の企業がポテンシャル顧客を掴むためのWebサイトについて、そのポイントと留意点をご説明します。

2.Webサイトのポイントと留意点

コンテンツの構成と内容

前章で述べた通り、ポテンシャル顧客は自社の課題を解決する方策を探しています。したがってWebサイトは、ポテンシャル顧客の課題からの検索にヒットして、解決策を提示できるものでなければなりません。

そこで、まずポテンシャル顧客の課題として想定される事項のキーワードを集めたページを制作し、検索からそのページがヒットするようにします。このようなページを「ランディングページ(LP)」といいます。

LPでは「このようなことで困っていませんか?」という問いの形でいくつかの課題を示し、ポテンシャル顧客の共感を得ることを目的とします。ただしその中では解決策を提示しません。

ポテンシャル顧客がある課題に対して、その解決策のページへのリンクをクリックすることで、その顧客が本当に困っている課題を知ることができるからです。

こうして得られた解決策に関する情報に関心を持ったポテンシャル顧客は、問い合わせページに自然にたどり着くことになります。

(図3 サイト構成例)

留意点について

Webサイトのコンテンツ制作における留意すべき点としては、まず解決策のページが、自社製品の技術的利点を紹介することに偏った内容になりがち、ということが挙げられます。製造業の場合、自社の技術力をアピールしたいという気持ちは分かります。しかしポテンシャル顧客に対してアピールすべきは、技術力より課題解決力である、ということを強調しておきたい、と思います。

たとえば、あるポテンシャル顧客は倉庫を自動化して生産性を上げたい、という課題を持っているとします。そこでWebサイトで「倉庫 自動化」というようなキーワードで検索したところ、2つのサイトがヒットしました。一方のサイトでは自動倉庫のためのさまざまな装置の仕様をずらっと紹介していて、同社の製品がいかに高性能かをアピールしていました。別のサイトではその会社が顧客の要望に合わせてどのように自動倉庫を実現したかを、事例として紹介していました。この場合、ポテンシャル顧客はどちらのサイトを選ぶでしょうか?ほとんどの場合、後者を選ぶと思います。

もう1つ、よく解決策に自社の製品や技術資料のPDFを掲載していることがありますが、なるべくPDFは避けた方がよいと思います。なぜなら検索でPDF内のキーワードがひっかかった場合、LPを素通りして顧客が直接PDFを開いてしまうからです。その場合は、せっかくのポテンシャル顧客が、問い合わせページに行きつくことがなく終わってしまうことになってしまいます。

またPDFはいわば袋小路ですので、そこからその企業のサイトの他のページに遷移することもできません。せっかくのポテンシャル顧客に、自社のプロフィールなどを知っていただくこともできないのです。

PDF資料は、サイトにリストと概要のみ掲載し、リクエストがあった顧客にのみ、別途送付するほうがいいと考えます。

3.Webサイトの外部委託について

最後に、Webサイトの制作や運営を自社だけで行う場合と、外部に委託する場合について考えたいと思います。

自社でサイトを制作・運営する利点は、外へ出ていく費用がない、ということおよび、製品に関する深い情報まで直接ポテンシャル顧客に届けることができることです。一方欠点は、自社のリソース(サーバのストレージ、マンパワーなど)を過度に消費してしまい、本業の製品製造や開発などの業務を圧迫することと、前章の留意点にも上げましたが、技術力のアピールに偏りがちになってしまうことです。

外部にサイトの制作・運営を委託する利点は、自社のリソースの消費を最小限に抑えることができること、および客観的視点から、その企業の技術力も課題解決力もバランスよくアピールするサイトを制作できることです。

もし自社のサイトをより効果的なものにリニューアルしたい、とお考えであれば、外部の専門業者に委託することも検討されてはいかがでしょうか?